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二松学舎大付吹奏楽部の渡部さん=2025年3月18日午後0時16分、阪神甲子園球場、中村英一郎撮影

(18日、第97回選抜高校野球 二松学舎大付3―2柳ケ浦)

 二松学舎大付の吹奏楽部でパーカッションを担当する渡部栞(しおり)さん(3年)は18日、甲子園のアルプススタンドで特別な思いでいた。打楽器による応援は東京では禁止されている。高校入学から2年、小さい頃から夢みた「初演奏」が、これ以上ない舞台で実現した。

 父は愛媛県の元高校球児で、母は吹奏楽部員だった。春夏の自宅のテレビは高校野球。球場に響くブラスバンドの音が、自然と好きになった。

 中学校で吹奏楽部に入部。高校では「野球応援の演奏がしたい」と、複数の野球強豪校を見学し、「学校の雰囲気がよかった」と、二松学舎大付を進学先に選んだ。

 衝撃を受けたのは、入学後。都内の高校野球では、打楽器の応援が禁止されていると知った。それなら禁じられていない甲子園に行ってもらうしかない。「野球部を信じる」と前を向いた。

 だが、200以上のチームがある東京で、代表の座を勝ち取るのは簡単ではない。1年生の夏は、東東京大会3回戦敗退。秋の都大会は準々決勝で敗れた。

 いつか球場で演奏したい。そんな思いを抱えながら2年生の春、部の「野球応援係」に就任した。応援曲の選定や、チアリーダー部などとの合同練習を調整し、球場では指揮者を務めた。

 「甲子園当確」が決まったの…

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